線猫日記

音楽鑑賞と日常と感情

shepherd (demo album)

はもう存在しない。

 

上京する前からCDも聴いていて好きだったので、いつかライブハウスに行って聴いてみたいと思っていたバンドだった。

 

東京に来た頃は新作のアルバムリリースが決定しており、アー写も新しいものにしていたばかりだった。しかし、その新しいアルバムがついに出ることはなかった。

 

ボーカルの方が急性心不全により亡くなってしまったからだ。

 

CDも何枚もリリースし、知名度も増えてきてこれからだというときだった。

 

今でも生きていたらどんな活動をして、どんな音源を残していたのかな、と考えてしまう。

 

存在していたものが消えないように、忘れられないように、シェパードが活動していたときにリリースした音源を少しずつ書いて残していければなと思う。

 

デモアルバムの方から紹介する。他のアルバムは別の機会に。

 

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 『atelier and pale distance.』
~収録曲~
atelier
stainless
(di)stance
モノワカリ
Isolation task
夢のあと

1st mini album (demo)。全体的に淡泊で型に当てはまらない独特な構成である。この時は声のトーンがわずかに違う気がする。明るさはなく雰囲気は、まさにジャケットの絵のようなイメージを感じる。バンドらしさをあまり感じない。ディスクユニオンの紹介ページから抜粋だが、『ジャケットのブルーから連想される淡く繊細な世界観を見事に表現。美しいアンサンブルと情緒的歌詞、染み透る歌声で独自の世界を魅せてくれます。』……流石としかいいようがないくらい簡潔にまとめてくれている。これくらいのキャッチコピーを書けるようになりたい。

最初の曲のアトリエはバランスのとれたテンポが程よい代表曲。1曲目らしい演奏だなと感じるが、歌詞は難しく明るくはない。雰囲気でなんとなく感じられるくらいが丁度いいのかもしれない。
2曲目はステンレス。寂しく奏でるギターに伸びるように歌いあげる。狂おしい詞に少しずつ壊れていくような世界観がなんともいえない。
「(di)stance」はinstrumental、4曲目の前奏のようなギターのみのインスト。アルバム全体の雰囲気を寂れた音で表現しているよう。
「モノワカリ」穏やかに淡々と曲が流れる。幼い昔の記憶のようで、幻想で、もう正解が分からない、でもそれがいい。
この中でも5曲目がバンドっぽい。かき鳴らすギターにベースの主張が強く、透き通る声が響く。何度も歌う"思い出して"の言葉がクセになる。はじまりの音も短いが印象的。
「夢のあと」は最後の曲らしくバラードのような曲。自分の中のもう片方を、君を、歌っている。現実から乖離しているような、、、難しい。

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 『nude.』
~収録曲~
primrose
virgin in clinic
ヒロイン
camouflage
再生回数
Roller coaster

2nd mini album (demo)。デモと表記されてはいるが全然完成度が高い。このうち3曲は録り直して別のアルバムにも収録されている。この音源のすごいところは『nude.』はすべての曲が好きになってしまうのである。テーマに沿ってアルバムが全体的に統一されているようなつくりで、歌詞の1つ1つの表現の組み合わせが絶妙で聴きながら想像させる魅力がある。前作よりも甘く歌い上げるような声が際限なく響く。同じくディスクユニオンから抜粋。『「不感症の君も抱き締めよう」 「新しい髪形はどう?」―唯一無二の女性観を内包した、冷たくも暖かな、淡い夢にも似た世界。

「primrose」の意味はサクラソウ。あまり目立つことはないがバランスの取れた曲。"そのツートンカラーの奥の方"ここの表現が好き。不安定な彼女を優しく受け入れてくれるような、そばにいて信じ続けて待つ続ける優しさを。歌詞が優しい。
「virgin in clinic」聴いてほしい曲のひとつでMVとしても出してほしかった。穏やかにかき鳴らすギターの音が特徴的。抽象的な歌詞の世界観が断片的に想像ができて浮かぶ。海岸線という単語でイメージが広げる。
3曲目は繊細な心情を歌った曲。ジャケットはとくにこの曲をイメージしているのかもしれない。作詞をしているのは男性だが女性の視点も考えられた構成、歌詞に寄り添うような優しい音が奏でられる。
4曲目は乾いたドラムの音から始まる。mosaic、jesus、resetのような英単語が歌詞に使われており、曲を流したときに"夢の"と聞こえていたところは"You may know"だったりするのがおもしろい。甘いボーカルの伸びるよう歌う声が聴きどころ満載。歌詞はあまり考えずに感覚で聴きcamouflageの世界に浸る。
「再生回数」はアルバムの中では力強さのある曲。"偶像無しでも崇拝してよ" "愛情無しでも抱いてくれるの?" "客観性に欠ける評価 興味はないから"歌詞全体に強めの感情が表現されている。
Roller coaster」夏の想起させる蝉の声が泣いているところから始まる。軽くゆったりと奏でるメロディが過ぎていく時間の感覚を表している様。遊園地での不完全な二人を描く。結末は分かっているのに時間がこのまま止まってしまえば、醒めない夢であればと切なく祈ってしまう。この曲は「Mirror」というアルバムにも再収録されているが、こちらは蝉の声が消え、アレンジにピアノが奏でられており冬のイメージが個人的には浮かぶ。

視聴ができないのが残念、、、